暴力の雨
そのままゆっくり雨の中を歩き出した。
俺は大丈夫かと言いながら肩に手をかけようとしたがやめた。
車に戻りながらあちこち痛みがある事に気付いたが、仕方ないなと思った。
車に戻りジャンパーを脱ぐとダッシュボードからタオルを出して身体を拭いた。
暖房も上げながら白いタオルを見るとあちこちに血が付いていた。
女が何してんのよと怒った声を出した。
ラジオから今日が震災の日である事を放送しているのが聞こえたが朝からそればかりだなとうんざりしていた。
女がラジオを消して何してんのよとまた怒鳴ると震災の事ばかりでうんざりなのにと言いながらCDプレイヤーに流行りのグループのCDを勝手に入れた。
俺の中で何かが弾けた。
女に向かって降りろよと言いながらCDを抜くと窓を開けて外に投げた。
財布から三千円取りだしかけ少しだけ考えて二千円にすると女に押し付けこれで帰れよと静かに言いながらドアを開けた。
後ろにあった古い傘も押し付けるように渡すとじゃあなと手を挙げてドアを閉めようとしたが女が怒鳴り散らしながらドアを持ってなかなか閉めさせてくれなかった。
俺は運転席から女を蹴って何とかドアを閉めてバスでなら帰れるだろうと言いながら車を発進させた。
女が激しい雨の中でまだ怒鳴っているのが聞こえたが無視した。
煙草に火をつけようとしたが、ジャンパーのポケットに入れてた為にすっかり濡れて駄目だった。
近くのコンビニで煙草と暖かいコーヒーでも買おうと思った。
スマホからLINEの入る音が何度も続いた為に見ると女からだった。
時間をかけてやっと今日初めてホテルに連れ込めるようになった若い女だが俺はLINEをブロックした。
近くにコンビニは無く雨が窓を叩きつけていて暖房を上げてもすっかり冷えた身体はなかなか暖かくならなかった。
身体のあちこちが痛んだ。
何だか色々んな事が滲み混んで行くように嫌になった。
ゆっくりじわじわと滲み混むように嫌になった。
再び仕方なくラジオをつけると上を向いて歩こうが聞こえてきた。
俺はそれを痛む口で歌いながら車を走らせた。
さっきまで乗っていた女の顔がどんな顔だったか思い出せなく苦笑いをした。
激しい雨は、いっこうに止む気配を見せないようだった。
ワイパーは激しく動き続けていた。
了