わたしの可愛い旦那様
ふと、前から歩いてくる初老の夫婦に、わたしは目を止めた。
男性の方は杖をつきながらもしっかりと歩いており、その横に女性がそっと寄り添っている。
時折言葉を交わす以外、二人は穏やかに黙り込み、ただ共に歩いていた。
「なんだか羨ましい…」
わたしの零した言葉に、旦那様がそうだねと答えて、二人の様子を見守る。
初老の夫婦は、だんだんとわたしたちに近寄より、そして通り過ぎていった。
年を重ねていっても、あんな風に旦那様と歩けたら。
わたしは心の中でそう思った。