君に届けた春風
奈津は花壇の前でかがんでいた。
あかねはそっと奈津の横にかがんだ。
あかね「奈津…?どうした?」
奈津「あかね…。私…最近変なんだ。」
あかね「変…って何が?」
奈津「私…高屋の顔をまともに見れなくて。高屋の笑顔とか困った顔とか、苛ついてる顔とか思い浮かべてしまって。高屋を思えば思うほど、なんか。ここが熱くなって」心臓あたりを押さえ話を続ける
奈津「この前。高屋…私に熊井さんって人の話をしてくれたの。私…高屋が過去の事を話してくれて少し近づいたって思った。でも…加賀澤さんといるとこ見たら、苦しくて…」俯きすすり泣く
あかね「奈津…。高屋の事好きなんだね」奈津の背中を優しくさする。
奈津は少し顔をあげる。
奈津「私…どうしたらいいんだろ…」
あかね「奈津。それが恋だよ!通称。春風とも言う」
奈津「はるかぜ?」
あかね「そ。春の風、春風」ニコっと奈津に向けて話を続ける
あかね「春の風って、急に吹いて、最初はヒヤッとするんだけど、だんだん暖かくなって。気持ちがポワッてする。心に吹く風」
奈津「これが…私の…春風…?」
あかね「そう。奈津の春風は高屋なんだよ」
奈津「あかね…」
あかね「高屋ってさ。見てるとわかりやすいんだよね。たぶん。奈津の事、好きなんじゃないかな。」
奈津「そうかな…」
あかね「だって。熊井の事話してくれたんでしょ?それに〜奈津と話してる高屋は、楽しそうなんだよね。なんか、止まってた時計が動き出したような感じがする」
奈津「でも…私。自信ない。」再び顔をうずめる。
あかね「奈津…」
そして。スピーチ本番の集会の日
高屋と恵里奈は、意気投合したスピーチをした。周りは大好評で。拍手や声援がすごかった
奈津もあかねも感動した。
奈津はあかねと教室に戻る。
最後に教室に入ってきた高屋と恵里奈。
皆が一気に2人の元に集まりスピーチを褒めていた。
奈津は席から動く事なくどこか遠くを見るように一点を見つめていた。
その日1日が終わり、奈津は1人下駄箱で靴を履き替えていた。
恵里奈「あ〜ら。負け犬の水月さ〜ん。」
両脇につかいのような2人と一緒に奈津を睨むように立っていた。
恵里奈「残念ね。高屋くん、水月さんによく話しかけてたけど、やっぱり遊びだったみたいね。だって、高屋くん。私の事好きって言ってくれたし。やはり、高屋くんと結ばれるのは、この恵里奈サマよ〜。オーホホホ」
奈津の前を通りすぎる。
恵里奈「もう。高屋くんはあきらめなさい」
奈津の耳元で囁き、帰って行った
しばらく奈津はその場を動けずにいた。