君に届けた春風

数日後ーーー。

外は大雨。

3限目の授業が終わり、あかねが両手を伸ばし大きく体を伸ばす

周りも次の授業の準備をしたりして友達と話したりしている。

あかね「はぁ〜もうすぐテストかぁ〜。嫌だな〜」ふてくされた顔をしていた。

奈津「ねぇ…あかね。一緒に試験勉強しない?」

あかね「いいね〜。皆でやればわからないとこ教え合えるし」

こんなたわいもない話を、奈津はあかねと学校で話す日常が続いた。

ある日の午後、蝉の声が鳴き始めていた。

奈津はあかねの自宅へ行き、あかねの部屋で試験勉強していた。

あかねが窓を開け外の空気を吸い気分転換する

あかね「もうすぐ、夏休みだね〜?」空を眺めながら言った

奈津「そうだね。あかねは夏休みどっか行くの?」計算問題を解き終え、持ってたシャーペンをノートに置いて言った。

あかね「夏休みは、イベント盛りだくさんだよ〜。祭りも花火大会もあるし」奈津の側に座りニコニコしながら言った

奈津「あ。そっかぁ。」高屋と花火大会に行く想像をした。

あかね「奈津は高屋ん家にいつ泊まるの?」
普通の事のように聞いていた。

奈津「え?そんなの話してないよ」
顔が熱くなり赤くなって恥ずかしかった。

あかね「あ…まさか、まだ?」

奈津「まだ…?って何が」

あかねは、口角を少し上げ奈津を見た。

奈津は少し後ろに反った。

あかね「奈津。男は女の前で突然オオカミになるから、気をつけなよ〜」

奈津「オオカミ…?」冷や汗が出た

あかね「男は、突然オオカミになって、女を食い尽くす。ガオ!」両手をオオカミの手に見立て奈津に向ける

奈津は目を丸くし、固まる。

あかね「な〜んてね」と笑顔になる

奈津「もう。驚かさないでよ〜」胸を撫で下ろす。

あかね「ごめん。ごめん」
机に向かい出し勉強を再開し始める。

奈津「あかねは、長谷部ん家に泊まる予定なの?」

あかね「うん。花火大会の日にね」

奈津「緊張しない?」

あかね「もう慣れた。」

奈津「え…そんなに泊まってんの?」思わずシャーペンを落としてしまう。

あかね「奈津も言ってみたら?高屋ん家に泊まりたい!って」

奈津「えーー!ムリだよ…」恥ずかしくなり両手で顔を覆う。

あかね「ふふ。大丈夫だよ。例え高屋がオオカミになっても、きっと怖くないよ」

奈津「そんなのヤダー。別にオオカミになる高屋見たくないし。」

あかね「いいんじゃない?無理しなくても」

奈津は少し高屋がオオカミになる想像をしてしまい、鳥肌がたった。

あかねはそんな奈津の様子を見て可愛く思い鼻で笑った。

奈津「あかね…」

あかね「ん?」問題集を解きながら返事する

奈津「あかねは…あるの?…食べられちゃった事…」恐る恐る聞いてみた。

あかね「あるよ。」

普通の事のように言っているあかねの返答に奈津は目をパチパチさせた。

奈津「怖くなかったの?」

あかね「最初はね…でも、大丈夫だったよ。長谷部は優しかったし、大切なものがわかったから。」懐かしそうに話していた。

奈津「大切なもの…か」

夕暮れに奈津はあかねの家を出て、駅へと向かう。

あかねの家から駅まで少し距離があった。

駅に近づくにつれ、あたりも暗くなり始めていた。奈津は、少し怖くなる。

すれ違う男性やコンビニで立ち話している男性達が八重歯を出すオオカミに見えて怯える。

小走りで駅へと向かっていると、4人位の知らない男性達が奈津を囲み始める

「これからどこいくの?」
「よかったら俺達と遊ぼうよ」
「どっか楽しいとこ行こう」

奈津は、声が出ずただ怯える事しかできなかった。奈津は心の中で(高屋…助けて…)

そう祈った瞬間、奈津は誰かの手に腕を引っ張られる。

気づくと覚えのある背中。4人組の男性達の輪から出ていた。

高屋「すいません。僕の彼女に手を出さないで下さい。」4人組の男性達に胸張って立っていた

4人組は鼻で笑い「行こうぜ…」と去って行った

奈津「高屋…ありがとう。」

高屋が奈津に振り返る
高屋「水月。こんなとこで何してんの?」

奈津「あかねん家であかねと一緒に試験勉強してて。今から帰るとこで」

高屋「あ。そっかぁ。そういえば言ってたな。そんなこと」

奈津「高屋はどうしてここに?」

高屋「バイトの帰り。」

奈津「そっかぁ」少しホッとする。

高屋「もう、暗いから気を付けて帰れよ」

奈津は微笑んで頷き、駅へと歩き出す

高屋「水月〜!」奈津の側へ駆け寄る

奈津は振り返り高屋を見つめる

高屋「試験終わったら、どっか行こう?頑張ったご褒美に。」奈津に微笑みかける

奈津は笑顔で頷く。

高屋「どこ行きたいか考えといて」
奈津「わかった」
「じゃあな。」「じゃあね」と手を振って奈津は帰宅した。


テスト期間最終日。

奈津は問題を解いている。教室の中で鉛筆の音が鳴り響く。

キーンコーンカーンコーン!
チャイムが試験終了の合図が鳴る。

皆、やっとテストが終わり気を抜いている。

奈津もあかねも気が抜けた。

教室にいたクラスメイト達が下校したり部活に向かう為教室を出て行く

あかねも奈津に声をかけ、長谷部と楽しそうに下校して行った。

奈津は、1人学校を出る。

学校を出てから少し歩くと小さい公園に1人高屋がベンチに座って奈津を待っていた

奈津が高屋の側に駆け寄ると高屋は安心したかのような笑みで奈津を迎えた。

高屋「じゃあ、行こっか」
ベンチから立ち上がり歩き出した。

奈津は高屋の服を掴む

奈津「高屋…」

高屋「ん?」顔だけを奈津の方へ向け返事した

奈津「どこ行くの?」

高屋「ん〜…とりあえず腹へったから、メシでも食おうと思ってる」高屋は、奈津に振り返る

高屋「どっか行きたいとこあんの?」
奈津の顔を覗き込むように見つめた

奈津「高屋ん家…」ドキドキしながら言うと
高屋は目を見開いた

高屋「俺ん家?ん…」目を空に向け考える

奈津「ダメ…?…だよね」
少し上目遣いになる奈津

高屋は真顔で奈津を見つめる

高屋「いいよ。その前にコンビニ行ってメシ買っていい?」

奈津は笑顔で頷いた。

高屋と奈津はコンビニに寄り弁当やパンやお菓子を買って高屋の家に向かった





















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