君に届けた春風

未来の選択

あれから月日は流れ、奈津達は高2の秋を過ごしていた。

そろそろ進路を決める頃に近づいていた。

奈津は担任の先生に呼ばれ、指導室で先生と奈津は向かい合う。

先生「水月。おまえここをもう一度受けてみないか?おまえなら受かる!おまえは化学の成績も良いし、受ける価値があると思うんだ」

それは、アメリカ研究大学で化学の研究をしている学校で、奈津には夢のような話だった。

奈津は受かる自信はないが受けてみる事を先生に伝える。

奈津は毎日放課後、アメリカ留学にかけ図書室に行き勉強した。

奈津は周りが見えなく夢中になった。

数日後、奈津は担任の先生に呼ばれ指導室に行く。

先生「水月。」しばらく緊張感のある時間になり、奈津は唾をゴクッと飲み込んだ。

先生「水月…おめでとう!合格だ!」と合格通知書を机に置き奈津に見せた。

奈津は夢のようで信じられないくらい喜んだ。

奈津はあかねのクラスに行き、報告した。

あかねも喜んでいた。

校舎庭であかねと奈津は合格を喜びあっていた。
あかね「奈津…高屋はなんて言ってるの?」

奈津は冷や汗が出た。

留学の事であたまいっぱいになり、無我夢中になっていたからだ。

奈津の脳裏に高屋の笑顔が浮かんだ。

奈津「高屋は…まだ知らない…」

あかね「え!?話してないの⁉︎」

奈津は俯いて頷いた。

あかね「それ…マズイかも…高屋。怒るかもよ?」
奈津は動揺した。

奈津「どうしよう…!あかね。私、夢のような出来事に夢中になってた…高屋の事考えてなかった…高屋。怒るよね。」

あかね「だって、その留学。行ったら3年は帰って来れないんだよ?」

奈津「え!?そうなの!?」

あかね「知らなかったの⁉︎あんた、そんなんも知らないで受けたの?」呆れた顔をした。

奈津「だって、先生は行ってもすぐ帰って来れるからって。私…1〜2ヶ月位にしか思ってなかった…」肩を落とした。

あかね「まぁ。よく考えるのね〜愛を選ぶか夢を選ぶか。それによって奈津の未来は変わるんだよ?」奈津の肩に軽く手を置いた。

奈津は悩んだ。来る日も来る日も悩み続けた。

高屋と廊下ですれ違う時、目を反らしてしまう。高屋の顔を見れないからだ。

高屋からラインが入っても返事を返せずにいた。奈津は高屋とまともに話せなかった。

そして、1週間がたった朝。
奈津が学校に着くと掲示板の前に人だかりができていた。

恵里奈が奈津を見つけ、奈津に駆け寄る

恵里奈「水月さ〜ん。おめでとう!」と奈津に抱きつく。表情も和かだ。

恵里奈は奈津から体を離し、奈津を満面の笑みで見つめた。

恵里奈「水月さん。寂しくなるけど、向こうでも頑張ってね!」お尻をフリフリさせ奈津から去って行く。

高屋「ふ〜ん。そういうことかぁ…」
奈津が後ろを振り向くと高屋が立っていた。
高屋は少しムッとした顔をしていた。

高屋は黙って奈津を通り過ぎ、校舎へと入って行く。

奈津は高屋を追いかける事が出来なかった。


放課後…下駄箱で奈津は高屋が来るのを待っていた。

高屋が下駄箱に来て靴を履き替え外に出ようとすると、奈津が目の前に現れた。

奈津「高屋…あのね?」言葉がつまり俯いた。

高屋は奈津を通り過ぎるとすぐ立ち止まり

高屋「帰んねぇの?」

奈津は瞑っていた目を見開き高屋に振り返る

高屋はスタスタ歩いていく。

奈津は高屋の後を追い高屋に並んで歩いた。

高屋「よかったな…アメリカ留学合格して」

奈津「高屋…」

高屋「別れよう?俺達…」歩いていた足を止め俯いていた。

奈津も立ち止まり高屋の服を両手で掴み焦った表情で目に涙を溜めた。

奈津「ごめんなさい。留学の事話せなくて。何度も話そうとしたの!でも、なかなか言い出せなくて。高屋の笑顔が消えちゃう気がして…
怖くて…でも…別れたくない!」

高屋「もう!うんざりなんだよ!」
奈津の手を勢いよく振り払う

俯いてた奈津は顔を上げ高屋を見ると、高屋は怖い顔をしていた。

高屋「俺は、お前を哀れんだだけだ!本気なわけじゃない。調子にのんな。」
奈津から目を反らし冷たい態度で奈津から去る

奈津は、高屋が去っていく姿をただ見つめる事しか出来なかった。

奈津はその場で座り込み肩を落とした。

翌日。奈津が学校の廊下を歩いていると、高屋が恵里奈と仲良く歩いていた。

高屋は奈津をチラ見し何も言わずに奈津とすれ違った。

奈津は振り返り高屋が恵里奈と歩いていく後ろ姿を眺めた。

あかねはその様子を切なく見ていた。

時は流れ、奈津がアメリカ留学に旅立つ日の前日、奈津はもう一度高屋とちゃんと話がしたくて高屋の自宅に行きインターホンを押す。

ドアが開いて出て来たのは高屋のお兄さんだった。

兄「お!奈津ちゃん!春翔なら今いないよ?さっき出かけちゃったんだよね〜」

なつ「そう…ですか。ありがとうございました。」軽く会釈をし、帰ろうとする。

兄「奈津ちゃん!ちょっと話さない?」

奈津は高屋のお兄さんと公園に行き、アメリカ留学の事を伝える。

兄「そっかぁ。奈津ちゃん、アメリカ行っちゃうんだぁ。寂しくなるなぁ。」

奈津は一方的に別れを告げられた事も話し肩を落としていた。

兄「奈津ちゃん。それは…春翔の優しさだよ。
春翔は奈津ちゃんの夢を応援してるんだよ。
まぁ…回りくどいかもしれないけど、そうしないと、奈津ちゃんは留学諦めちゃうでしょ?だから春翔はわざと冷たい態度で別れを言ったんだと思うよ。アイツそういうとこあんだよな…本当は奈津ちゃんの事好きなのに」

奈津は明日アメリカに旅立つ事を教え帰った。

兄が自宅に入り高屋の部屋に入る。

高屋はベッドでうつ伏せになっていた

兄「本当に奈津ちゃんに会わなくてよかったのか?奈津ちゃん寂しそうだったぞ?」

高屋は顔を枕に伏せたまま黙る

兄「明日の午後3時の便だってさ。」机に何かを置いて部屋から出た。

しばらくして高屋は起き上がり机に置かれたイルカのキーホルダーが目に付いた。

高屋は仰向けになり、腕を額に乗せ天井を見つめていた。

奈津の笑顔や困った顔、怒った顔が浮かびあがり、思い出していた。

高屋の心はポッカリ穴が空いた状態だった。

ドアをノックする音と同時に兄が入って来た。

兄「春翔…いいのか?このまま奈津ちゃんと離れ離れになって。好きなんだろ?ちゃんと見送ってやれよ。好きな人と離れるのは、辛いけど…奈津ちゃんの夢や希望のある未来を応援する事も、奈津ちゃんの笑顔の為だぞ。」その後、軽く溜息をついて部屋を出る。

高屋は奈津との過ごした時間を思い出した。
脳裏で奈津の色んな表情がスライドした。

高屋は本気で奈津が好きだった事に気がつき涙が溢れ出ていた。

手で顔を覆い「奈津…奈津…」と泣きながら奈津の名前を呼んでいた。

兄はドア越しに切なく聞いている事しかできなかった。


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