君に届けた春風
奈津は、ドキドキして服選びをしていた。

金曜日の夜。自分の部屋で、服をベッドの上に並べ迷っていた。

奈津はドキドキしてなかなか眠れなかった。

そして、土曜日。鳥の鳴き声がし、晴天。
窓から光が差し込み始めていた。

奈津は高屋との待ち合わせ場所に向かって電車に乗っていた。

改札あたりに着くと人がたくさんいて改札口を行き交う人がピッ!ピッ!と鳴らしながら通っている。

上り方面の階段から高屋が上がってくるのが見えた。

高屋も奈津を見つけ手を振った

高屋「ごめん。待った?」

奈津「ううん。私も今着いたとこ」

高屋「じゃあ、行こっか。」

高屋の後ろを付いて行くように歩く奈津

2人は上り線に乗った。

少し大きい駅で降り、駅前のショッピングセンターに入る

高屋は服屋さんでいろいろな服を見ていた。

しかし、その店は子供服コーナー。

奈津は不思議に思っていた。

高屋は奈津の様子をチラッと見て服を見ながら話し始めた。

高屋「俺のさ。甥っ子がもうすぐ誕生日なんだ。んで、服でもあげようかと思って。おまえ、年の離れた弟がいるって言ってたから。
それに、子供服コーナーに男1人で入るのも、なんか抵抗あってさ。」

照れている高屋の表情が可愛く見えた奈津

奈津「何歳?甥っ子さん」

高屋「今度3歳。」

奈津「身長は?どれくらい?」

高屋「あ〜あいつチビだからなぁ。この位かな」高屋は膝あたりに手をやり身長を表す

奈津はいろんなシャツを見ながらデザインを探した。

奈津「ん…こういうのとか、これは?」
と様々な服を取り、高屋に見せる。

高屋「ん…サイズでかくねぇ?」

奈津「男の子ってヤンチャだから、すぐ大きくなるし、動きやすい方がいいんだって。うちのお母さんよく言ってるよ。」

高屋「なるほど」

奈津と高屋は2人でいろいろ悩み、1枚のシャツを購入し、プレゼント包装をしてもらい、高屋はカバンの中に入れた。

奈津と高屋はショッピングセンターから出て、近くにあるゲームセンターに立ち寄った。

太鼓の達人をやったり、アイスホッケー等で遊び楽しんだ。

あるUFOキャッチャーを見ていると。

「晴翔!?」
高屋は呼ばれる声の方を見たと同時に奈津も声に気付き振り向く

「晴翔〜!久しぶり!」と女は高屋に抱きつく

高屋はすぐ体を離す。

高屋「和美⁉︎久しぶり!」

和美はニコニコして、チラッと奈津の姿を見つける。

和美「晴翔。彼女できたの?」

高屋「いや。友達だよ。」奈津をチラ見して言った。

高屋は奈津に振り返る。

高屋「真島和美(ましまかずみ)俺の元カノ」

和美「よろしくね」高屋の体をから顔を出し、笑顔で奈津に言った。

奈津は、高屋と和美が仲よさそうに話している仲に入る事ができず、気まづかった。

奈津と和美は外に出てベンチに座った。

高屋は3人分の飲み物とポテトを買いに行っていた。

和美「奈津…さんだよね?」
奈津に微笑み言った

奈津「うん」気まづく頷いた

和美「晴翔の事好き?」

奈津「え…」奈津は答えに迷った。

和美「不思議なんだ。晴翔がナゼあなたのような、素朴な人と仲良くしてるのか」

奈津は、何も言えなかった。奈津自身もどうしてかわからないからだ。

和美「私達ね。うまくいってたんだよ?初めて同士でSEXもしたの。でも、ある事件をきっかけに私達の歯車が合わなくなって。別れちゃったんだ」
気付くと和美は遠くを眺めていた。

奈津「和美…さんは…」

和美「和美でいいよ。」

奈津「和美は…まだ高屋が好きなの?」
ドキドキして、唾を飲み込み答えを待った

和美「…好きだよ」と。言った後の微笑みは懐かしそうな感じだった。

奈津「そう…なんだ」

和美「忘れられないと思う。大切な人だから」

高屋がトレーに3人分の飲み物とポテトを乗せて持ってきた

高屋「お待たせー。前の人が長くて参ったよ」

和美「ありがとう。ポテト、いただきま〜す」

高屋「水月も食べよう?」奈津の顔を覗き込む

奈津は居づらくなって、その場から走り出す

高屋「水月!ちょっ。ごめん!」
持ってきたジュースとポテトを放って奈津を追いかけた。

和美は、何もなかったかのように、ポテトを食べジュースを飲んだ。

高屋「水月!」

奈津は走り続ける。

高屋「ちょっ!待て!って」奈津の腕を掴み足を止める。

奈津は顔を反らす

高屋「急にどうしたんだよ!」

奈津「高屋は…高屋はなんで、私と仲良くしてくれるの?大切な人がいるのに。忘れられない人がいるのに。私が万引きしようとしたのを脅すため?」目に涙をため、高屋を睨む。

高屋「水月…!」
少しムッとした顔をし、奈津の手首を握り
「ちょっと、来い!」と引っ張り出す。

奈津は引っ張られながら歩く

奈津「高屋!どこ行くの?」

高屋は黙ったまま奈津の手を引き、バスに乗り。移動する。

奈津が気付くと、お墓に来ていた。

熊井家之墓と書いてある前に高屋はかがむ。

高屋は「俺の親友の墓なんだ」
高屋は寂しそうな目でお墓を眺めていた。


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