少しずつ近づきたい
驚きの連続
 機械工業で働いている二十七歳の麻柄紗由(まがらさゆ)は仕事が終わったので、肩を回したり、腕をゆっくりと伸ばしていた。

 デスクの周りを綺麗に掃除してから、忘れ物がないか鞄の中を数回チェックして、帰る準備をしている周囲の社員達に挨拶をした。

 今日も無事仕事が終わったので、たまには普段行かないようなところへ行ってみようか考えながら歩き進んでいると、今まで一度も入ったことがない小さなジュエリーの店を見つけた。

 店内に入って商品のピアスの値段を見てみると、安くて五千円以上、高くて十万円以上のものがある。

 こんなに小さくてもそれだけ値段が高いので、正直かなり驚いて、目を大きく見開いた。
 他の商品が気になったので、持っていた商品を元のところに戻した。

 ブレスレットが置いてあるところまでのんびりと移動して見てから、身につけている自分のブレスレットをじっと見た。

 このブレスレットは同じ職場で働く柿堺(かきざかい)からもらったもの。

 四ヶ月前、彼に告白されたとき、次に会うときにこれをつけていたら返事はイエス。つけなかったら返事はノーということをそのとき決めていた。

 仕事で別の地方へ行っている彼がもうじき帰ってくる。

 そのときにこのブレスレットをつけているところを彼に見せて、返事をしようと考えている。

 すぐに返事をしたいので、早く会いたくて仕方がない。

 そんなことを思いながら店を出て、次はどこへ行こうか、何か他に良い店がないか考えながらゆっくりと歩いていると、飲食店が見えてきた。

 人通りが多く、あちこちの店が混んでいて、歩きながら外から気になったところの店内を見ていると、中にいた店員があと少し経ったら席が空くことを教えてくれた。

 目の前の店で食事することに決めて、少し待つことにした。

 しばらく待っていると、知っている声が耳に届いたので、声を上げて驚いて振り返った。

 店から出てきたのは柿堺だったので、彼に声をかけようと急いで近づいた。
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