海月物語。
 海斗は、マイクを外し、ティンクに話しかけた。
「あのな。あそこにいるのが俺の好きな人だよ。お前に、授けるから。頼む。来海に届けてきてくれ。」
«キュッキュキュッキュ。»
海斗は、マイクをつける。
「さあ、いきますよー。ティンクが、僕の好きな人に、この箱を届けることができますよう、皆さん声援お願いしまーす。」
海斗は、ティンクの鼻先に箱をのせる。
「頼む。」
ティンクに合図を送る。ティンクは動き出した。
 海斗、来海、上司に客席の人。皆が固唾をのんで見守る。あと、半分。あと、もう少し。ティンクは、舞台の前まで無事に到着した。
「成功しましたー。初めての大成功です。皆さん盛大な拍手をお願いします。」
«パチパチパチ‥‥‥‥»
「本日は、ありがとうございましたー。」
客席の人は、バラバラと席を離れていく。
来海は、ティンクから箱を受け取った。ティンクは、潮を噴射し潜っていった。
 来海は、箱を開けてみる。見覚えのある赤いレースの布があった。広げてみると、来海のTバックだった。
「中身なんだったんですか~?」
来海の腕を引っ張ったスタッフが、聞いてくる。来海は、Tバックを丸めてポケットにしまった。
「な、なにも入ってなかったです。」
来海は、苦笑いで話を流した。
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