海月物語。
 ウェットスーツ姿の海斗が、来海の元に走ってきた。
「じゃ、俺はこれで。」
来海を引っ張ったスタッフが去っていく。
「よかった。成功して。」
海斗は息が切れている。
「なにかの嫌がらせ?」
来海は少し睨み、舞台から去ろうとした。
「はぁ?」
海斗が追いかける。
「なんで嫌がらせになるんだよ。」
「なんで私のパンツなの?」
来海は、早足になった。
「嫌がらせなのは、そっちだろ。」
海斗が怒鳴る。少し離れた所で来海は足を止めた。
「お前は、いっつも急なんだよ。倒れるときも。家を出ていく時も。家に来る時も。休みの日を伝えるのも。いっつもいっつも急なんだよ!!!お陰で、俺のパンツがどこにあるか分からなくなるし。ティンクは言うこと聞かなくなるし。散々だ。嫌がらせしてるのは、そっちだろ!!!」
海斗は、息切れ寸前まで怒鳴り散らした。
「だからって、何でパンツなの?」
「来海がわざと俺の衣装ケースに入れてったんだろ。間違って履くとこだったわ。」
「ククククク‥‥‥。」
来海は、笑いを堪えられなかった。
「なんだお前。怒ったり笑ったり‥‥」
海斗はまだ怒ってる。
「初めてだね。喧嘩したの。」
来海は笑いから出た涙を拭う。
「そんなことで笑ってんの?」
まだ笑い声をあげている来海に、海斗は呆れた。

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