海月物語。
 ベッドに戻った来海は、窓の外をぼんやり眺めていた。海斗は、ベッド横にパイプ椅子を持ってきて座っていた。海斗は、重い口を開く。
「名前、聞いて良いかな?」
「来海(くるみ)です。」
「来海ちゃんね。あの、親は?」
「いません。」
「頼れる人は、だれかいる?」
「・・・・。」
「そっかそっか。ここの入院費とか治療費は気にしないでゆっくり休んで。」
「すいません。ちゃんと、返すので。」
「倒れた原因、ろくに食べてないし、寝てもいないからだって先生言ってたよ。お金もないようだし、なにか困っていることあるの?」
来海は静かに首を横に振る。
「そっか‥。じゃあ、また明日くるから、今日はゆっくり休んで。いいかい。もう、抜け出そうとはしちゃダメだよ。」
「はい。」
海斗はパイプ椅子を片づけ、病室を出た。

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