冷酷上司の甘いささやき
その後、ほかの誰と話しても、京介の言葉が頭の中をぐるぐると回り続けた……。


私は、人から言われた憶測をあまり気にするタイプではない。

だけど、課長のこととなると胸がざわつく。


……私、いつか課長のこと好きじゃなくなっちゃうのかな? やっぱりひとりで過ごすのが一番いいって思って、だんだん課長から遠ざかって、課長のこと傷つけて、別れちゃうのかな?


……私って、そういう人間なのかな。今まで京介以外の男の人とも付き合ったことはあったけど、みんなそういう理由で別れてきた。私がフッたり、相手にフラれたり、別れ方はその都度違ったけど、別れた理由はいつだって私の性格が原因だったと思う……。
そのたびに、私が思っていた以上に……相手のことを、傷つけてしまっていたのかもしれない……。


そう思うと……なんだか、全身がゾクッとした……。



一次会が終わると、仲のいいグループでなんとなく別れ、二次会に行ったり帰宅したりと、バラバラになった。

私はマイちゃんと林くんと、そして京介と一時間だけカラオケに行った。

その後、みんなで同じ電車に乗り込むも、マイちゃんと林くんは先に降り、私と京介のふたりきりになってしまった。


京介とふたりきりになるのは、付き合っていた時以来かもしれない。

あのころは、京介の方からいろいろ話を振ってくれていたから、話が途切れることはなかった。でも今は、京介が無言で、なんとなく気まずい。

私が話しだせばいいんだろうけど、いざとなるとなにを話題にしていいのかがわからない。
私と付き合っていたころ、京介はいつも必死に話題を作ってくれていたのかな、なんて今さらながら思う。
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