冷酷上司の甘いささやき
「……あのさ」

もうすぐ私が降りる駅に着くころ、不意に京介が口を開く。


「なに?」

なにを言われるのかわからなくて、なんだかちょっと怖くて、不安と緊張でドキドキしながら京介に振り向くと。



「……お前、今の彼氏とたぶん別れると思うよ。まあそしたら励ましてやるから、連絡くれよな」

……なんで。なんでそんなこと言うの。
別れたりなんか、しないもん。


私は京介から目をそらした。ちょうど駅に着いたので、そのまま京介にはなにも言わず……私は電車を降りた。



駅を出て、課長のアパートに向かって歩く。同窓会が終わったら泊まってっていいよって言ってくれてる。

今までだったら、同窓会でお酒飲んでほどよく疲れたあとに彼氏のおうちにお泊りなんて、たぶん考えなかった。早く自分の家に帰ってひとりでゆっくり過ごそうって絶対思ってた。
だからといって、今の私が無理をしているわけじゃない。課長も『無理して泊まらなくていいからな』って言ってくれた。
私が泊まりたいから、泊まらせてもらうんだ。


私は、これからもずっと課長のことが好きだよ。



……そう思うのに、なんで今、課長に会いたい気持ちと、どこか会いたくないような気持ちが入り混じってるの?



……不安だから?

京介からの言葉が、さっきからずっと胸に刺さってる。




課長のアパートに着いたころ、携帯が震えた。

それは課長からのLINEで、『駅まで迎えに行くから、電車降りたら連絡して』と書かれていた。
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