冷酷上司の甘いささやき
「なるほど……」

たしかに、言われてみればそうかもしれない。仕事中とか、大抵のことなら急なトラブルでもなんとか冷静に対応できるけど、恋愛のこととなると、対処法がわからないから顔に出やすかったかも。



「なに言われたの?」

課長にもう一度聞かれる。元カレが絡んでるとバレてる以上、正直に話さないと課長も嫌な気分になるよね。



少しためらったけど、私は京介に言われたことを、正直に課長に話した。



私が、いつか課長のことを好きじゃなくなって、課長を傷つけるだろうって言われたことをーー……。





「……はぁ」

課長は深いため息をついて、ついでに頭をボリボリとかいた。


「そんなの気にしてたら誰とも付き合えないだろ。誰だって、恋人とうまくいってる時に『いつかは別れて相手を傷つけるかも』なんて考えないじゃん」

「そ、それはそうなんですけど……! ただ、私の場合はその可能性が非常に高くて高い気がして……!」

「……その元カレ、『別れたら連絡してこい』とか言わなかった?」

「! 言われました! なんでわかるんですか⁉︎」

「……それ、元カレが戸田さんにまだ未練あるんだよ。もしくは、久しぶりに再会して、また火がついたか」

「え?」

「だから戸田さんに揺さぶりかけて、なんとかして恋人と別れさせて、そのあとで自分のところに頼ってくるように仕向けたんだろ。まったく、男の風上にも置けねぇ」
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