冷酷上司の甘いささやき
そ、そうだったの……⁉︎ で、でも、ありえるかも……?



だけど……。


「……元カレに言われたことも、あながちデタラメでもないというか……」


私の性格が原因で、課長のことを傷つけるかもしれない。京介にとっては下心のあるデタラメだったとしても、私の心にズシンと響いたのも事実だ。


……結局、やっぱりひとりで過ごすのが一番いいって、思ってしまうのかもしれない。


そんなことはきっとないって、もちろん願ってはいる。
だけど、言葉に出して断言したら、いつか余計に課長を傷つけてしまうんじゃないかって。『あの時お前はああ言ってくれたのに』……って。



頭の中でいろんな考えがグルグルとかけまわって、言葉につまり、だんだんとうつむきがちになり、なにも言えなくなる。


すると課長の、


「もういい」


という言葉が頭上から聞こえて、ビク、と体が震えた。


怒らせた……当たり前だよね。普通の彼女だったら、こんなことで悩んだりしない。



でも、課長としっかり目を合わせて、ちゃんと話さなきゃーーそう思い、顔を上げた、その瞬間。



ーーギュっ……。



課長に、正面から抱きしめられた。




「……課長?」

ど、どういうこと? てっきり、怒られると思ったのに。ていうか、普通は怒るはずなのに。

なんで、こんなにやさしく抱きしめてくれてるの?

ていうか……



私の心臓がッ、ドキドキしてうるさい‼︎ しずまれ‼︎
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