冷酷上司の甘いささやき
「……さて」

課長はいったん私から離れて、腕を組んだ。


「俺のこれからの課題は、戸田さんが不安になる必要のないくらいのいい男になることだけども」

「えっ⁉︎ いえいえ、そんな、課長はすでに素敵な人ですし……!」

「現にさっきまで不安になってたじゃん。いつか好きじゃなくなっちゃぅ〜って」

「そ、そんなしゃべり方してないです!」

「俺はもっと男らしくなる必要があるのかもしれないな」


課長はうーん、と考えこむ。


課長はかっこいいし、やさしいし、仕事もできるし、もうじゅうぶん男らしいと思うけど……。



「戸田さん的には、なにされたら『この人、男らしい!』ってなる?」

「え? うーん、そうですね……」

すぐには思う浮かばず、私もいっしょに考える。



すると、課長は突然、



ーードンッ……。


「かっ……⁉︎」


ど、どうしよう⁉︎

課長が突然手を伸ばしてきたかと思ったら、課長と壁に、挟まれてしまった。顔も、近づいてくる。唇が、触れそう。



「こういうことしたら、男らしい? なんて、少女マンガじゃあるまいしって感じ?」

「……っ、っ、っ!」

「……あれ? 結構効いてる?」


だ、だってだって! 課長の、好きな人の顔が、こんな近くにあってときめかないわけないじゃないですかー‼︎
壁ドンがなぜ流行ったかわかりますか⁉︎ 女性なら誰もが確実にときめくシチュエーションだからですよ〜‼︎
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