冷酷上司の甘いささやき
そう、思ってたんだけど。


「あ、あの、阿部さん? この手続きは明日やるものだよね? 送信する前に気づいたからよかったけど……」

「えー? あはは、全然気づかなかった」

「そ、そういえば昨日教えたとこ、ノートまとめてきた?」

「いや、疲れてて寝ちゃいました!」

「そ、そう……」


……またか。ちょっと、めまいがしそうだ。


阿部さんが配属されてから、三日。
阿部さんは、仕事に対して明らかにやる気がない。なんというか、学生気分が抜けていない。私がなにを言っても、あははと笑って、適当に受け流す。
メモもノートもとらないから、一向に仕事を覚えない。


今まで日野さんに少し困らされることもあったけど、日野さんとは明らかにタイプが違う。日野さんは、もう少し気配りをしてほしいと感じることはあっても、仕事にやる気がないわけじゃないし、返事もちゃんとするし、メモやノートもキレイにまとめていた。



「メ、メモとかとらないと、覚えたことすぐ忘れちゃわない?」

「そうなんですよねー。わかってはいるんですけどねー」

「あ、たとえばこれ、私のノートね。パソコンの画面をプリントして、その横に手続きの仕方を書いたりするとわかりやすいよ」

「あはは、戸田さんのノートめっちゃキレイなんですけど! ウケるー」

「……」

ダメだ。なにを言ってもちゃんと聞いてくれない。これじゃあ、仕事を覚えられるわけがない。

この子が悪いの? それとも、私の教え方が悪いの?


……どちらにせよ、ちゃんと注意はしなきゃいけないよね。
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