冷酷上司の甘いささやき
「なっ、ななな!? なにを突然!?」

課長からの突然のその言葉に、私は胸がキュン、どころか、心臓が爆発しそうだった。冗談だったらやめてください! と思うけど。


「……なんか、ちょっと気になってる。最初は戸田さんのこと、いつも誰かといっしょにいる、どちらかといえばニガテなタイプの女の子なのかな、と思っていたけど、実際は俺と同じでひとり好きで、それもあってか話してて楽だし。
なにより、今までずっと阿部さんに怒れなかった戸田さんが、俺のことであんなふうに怒ってくれたのが、すごいうれしかったし」

……そう話す課長は、いつもの無表情なんかじゃなくて、見たことのないくらいに真剣な顔で、私をまっすぐに見てくれていた。
恥ずかしいのに、課長のその目から、私も顔を背けることができない……。



だけど。

「そ、その、ちょっと急なことに、頭がついていかなくて、その……」

私も課長のことはちょっと気になってる……のかな。だけど、今は心臓のドキドキを抑えるのに精いっぱいだ。いい年して情けないけど。でも、今までこの性格のせいでちゃんとした恋愛をほとんどしてこなかったから、仕方ないじゃないか。


……それに。

「……私、ひとりが好きなんです」

私は課長の目をまっすぐに見つめ返したまま、そう口を開く。


「? 知ってる」

「な、なので、お付き合いをしても、たぶん、私はひとりの時間を優先してしまう気がして。恋人らしいこと、ちゃんとできない気がして。今まで付き合ったことのある人たちも、全部それが原因で、フラれたり私から別れを告げたりとかで、その……」
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