冷酷上司の甘いささやき
自分で言ってて、なんだか申しわけないというか、自分がいかに恋愛不適合者かあらためて思い知ったというか、いろんな意味でへこんだ。


だけど課長は。

「いいよ。そんなのわかったうえで、こっちは告白してる」

「えと……」

「ていうか、俺だってそうだし。彼女がいたって、ひとりの時間もほしい」

「……はい」

「じゃ、こうしよう。どちらかが会いたいと思っても、どちらかが”今はひとりでいたい”と思っていれば、会わないようにする」

「え、は、はい」

「恋人らしいこともべつにしなくていいよ。どっちかの家でいっしょにいるときも、俺に構わず戸田さんの好きなことしててもいい。俺もそうする」

「は、はい」

「だから俺と付き合って」


課長があまりにも真剣に私の目を見るから、まるで……心の奥まで見られているような気になる。でも、それも嫌じゃないと思った……。


だけど、やっぱりまだ、ちゃんと答えがまとまらない。答えを出すには、せめてひと晩ほしいと思う。そう伝えようとした、そのとき。


「わっ」

突然、課長の右手が私の頭に触れ、かと思えばそのまま力をこめられ、私は強引に顔を下に向けられた。

そして課長は。


「はい。頷いた」

そう言って、私の頭から手を離した。


「ちょっ、強引じゃないですか!」

「いいんだよ。この話はこれで終わり」

「えええ!」
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