冷酷上司の甘いささやき
「わかった。じゃあ、戸田さんはそこの木の陰に隠れてて」
「え、いっしょに隠れないんですか?」
「あの子たちがこのまま帰るのか、まだこの辺で花見してくのかさらっと聞いてみるわ。あと、月曜日は仕事来いっていうのもさらっと言う」
「え!? さ、さらっとですよ!? キツく言ったらダメですよ!? ただでさえお友だちといっしょなんですし!」
「わかってるよ。キツくなんて言わないから。誰かさんじゃあるまいし」
「う」
「冗談だから。ほら、もうすぐこっち来そうだから早く隠れろ」
「は、はい」
私は課長に言われた通り、一番近くの桜の木のうしろに姿を隠した。うぅ、やっぱり課長の冗談は冗談に聞こえません。
すると、数十秒後。
「あっ、課長」
「あれ、阿部さん。偶然」
姿を隠している桜の木を挟んだ背後から、課長と阿部さんの会話が聞こえてくる。
姿を隠しているから阿部さんの姿も私からは見えないけど、阿部さんの声には戸惑いみたいなものが感じられた。まあ、それもそうか。私が阿部さんを叱ったのって、阿部さんが課長にウワサ話をSNSにアップしたのが原因だもんね。
だけど課長は、まるでなにごともなかったかのように普通に阿部さんと会話を続ける。桜キレイだね、とか、友だちと来てるんだね、とか。
たわいもない会話だけど、阿部さんの声色や口調からは、だんだんと戸惑いがなくなっていくように感じられた。
「え、いっしょに隠れないんですか?」
「あの子たちがこのまま帰るのか、まだこの辺で花見してくのかさらっと聞いてみるわ。あと、月曜日は仕事来いっていうのもさらっと言う」
「え!? さ、さらっとですよ!? キツく言ったらダメですよ!? ただでさえお友だちといっしょなんですし!」
「わかってるよ。キツくなんて言わないから。誰かさんじゃあるまいし」
「う」
「冗談だから。ほら、もうすぐこっち来そうだから早く隠れろ」
「は、はい」
私は課長に言われた通り、一番近くの桜の木のうしろに姿を隠した。うぅ、やっぱり課長の冗談は冗談に聞こえません。
すると、数十秒後。
「あっ、課長」
「あれ、阿部さん。偶然」
姿を隠している桜の木を挟んだ背後から、課長と阿部さんの会話が聞こえてくる。
姿を隠しているから阿部さんの姿も私からは見えないけど、阿部さんの声には戸惑いみたいなものが感じられた。まあ、それもそうか。私が阿部さんを叱ったのって、阿部さんが課長にウワサ話をSNSにアップしたのが原因だもんね。
だけど課長は、まるでなにごともなかったかのように普通に阿部さんと会話を続ける。桜キレイだね、とか、友だちと来てるんだね、とか。
たわいもない会話だけど、阿部さんの声色や口調からは、だんだんと戸惑いがなくなっていくように感じられた。