冷酷上司の甘いささやき
ーー課長は、一部の社員たちからは、少し怖がられている。

大島 実之（おおしま みゆき）営業課長。
かわいい名前とは裏腹に、切れ長の目はいつも鋭く、その目で見られると威嚇された小動物のような気分になる。

そして、普段から笑顔をまったく見せず、言葉に関しても必要最低限のことしか言わず、言い方が少しキツい印象があるため、一部からは近寄りがたいと思われている。


なぜ、“全員から怖がられている”のではなく、“一部から怖がられている”のかと言えば、その理由はまず、課長のルックスにあると思う。

すらっとした高身長、サラサラの髪、整った目鼻立ち。鋭い目つきも、目と目が合わなければ単純にとてもかっこいいと思う。


そして、ルックスのおまけに、高学歴で営業成績がずば抜けていて、三十三歳という若さで課長に就任、おまけに独身とくれば、敬遠する女性社員よりは、課長に自ら近づいていく女性社員の方が多いのだ。


そんな課長に憧れるのは女性だけでなく、男性社員からも多く尊敬されている。



ちなみに、『男性はわかりやすいやさしさがないとダメですね』と以前語っていた日野さんは課長を敬遠するタイプで、私もどっちかというと、敬遠タイプかな。
そこまでニガテ意識が強いわけでもないけど、こんな性格だから“異性に近づきたい”とは一切思わないし、ましてやなにを考えているのかわからない課長が相手なら、余計。



まあ今はとにかく、今日は自分の仕事を早く終わらせて、この振り込みの手続きに取りかからなきゃ。
< 8 / 117 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop