冷酷上司の甘いささやき
その後、課長がシャワーを浴びてすっきりした感じで部屋に戻ってきてから、今度は私もシャワーを浴びにいった。明日の朝でいいやとか思っていたけど、せっかくだし。生理も来ちゃったし。


私がお風呂から出ると、課長は部屋の真ん中のテーブルに頬杖をつきながら、部屋のテレビをぼんやりと観ていた。


「なに観てるんですか?」

「んー? お笑い」

「お笑い好きなんですか?」

「んー、まあ結構好き」

「ふふ、ちょっと意外です」

そう答えながら、私も課長のとなりに腰を降ろした。


すると課長は、私のことを横目で見ながら。


「でも今は、お笑い観てたっていうより、戸田さんがさっき言ってたこと考えてた」

「私がさっき言ってたこと?」

「戸田さんが見たことのない俺の笑顔を、俺が阿部さんに向けてた、っていう」

「え、は、はい」

「それって、ほかの女性には見せない俺の表情とか行動を、戸田さんだけに見せたら喜んでくれるってこと?」

「そ、それはもちろんです! もっとたくさん見たいです」

私がそう言うと、課長は頬杖をつくのをやめて、今度は体ごと私に向けた。



「それなら、今から見せてもいい?」

「え!? もちろんです!」

「今まで付き合ってきた誰にも見せたことのない”俺”だけど、いい?」

「そ、それはむしろうれしいです!」

今現在、私だけが知ってる課長……というわけじゃなく、今まで誰も知らなかった課長の顔? そんなの、うれしいし、見たいに決まってる!
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