冷酷上司の甘いささやき
でも、課長はなんだか不安そうな顔をしている。


「ほんとにいい? 引かない?」

「引くってなんですか? でもどんな課長でも受けとめますよ」

「……じゃあ、甘えていい?」

「え? は、はいっ」

課長の口から、『甘える』という、なんだか課長らしくない言葉が飛び出したので少し驚いたものの、その驚きはすぐにうれしさへと変わった。
だって、好きな人から甘えられてうれしくないわけがない!


課長いわく、今まで付き合ってきた人に対しては、『甘えたい』とは思わなかったらしい。だけど、私に対してはなんだか甘えたいと……そういうふうに思ってくれたらしい。余計にうれしい!



でも、甘えるって具体的にどんな感じだろう? 課長のイメージだと……うん、”甘える課長”って、やっぱり想像つかない。
たぶん、膝枕とか耳かきとか、そういう感じかな。



私がそう思っていると。



「じゃ、膝かして」

「あ、はい」

やっぱり膝枕だ。そう思って、正座をしてから「どうぞ」と課長を促すと、課長は私の太ももに頭を乗せた。



……かと思ったら。


「ぎゅー」

「か、かちょっ!?」

課長は突然、私のお腹側に顔の向きを変えて、寝転んだまま、私の腰に手を回し、密着した。


そしてそのまま気持ちよさそうに顔を私のお腹にすりつける。まるで、猫みたいに。



課長のこんな姿は意外すぎて、さっき課長が『引かない?』と不安げにしていたのも頷ける。
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