冷酷上司の甘いささやき
不安な思い
あれから三ヶ月が経った。季節は暑い夏だ。


私と課長は、とっても仲良くしている。
相変わらずほかの社員さんたちには私たちが付き合っていることは内緒だから、社内でふたりで話すことはなかなかないけど、仕事が終わったあととか、休日とかは、前より会う時間がたくさん増えた。


もちろん、無理してふたりで会う時間を増やしているわけじゃない。会いたい、って思う気持ちが、お互いにどんどん大きくなっていくからだ。



あれだけひとりでいるのが好きだった私たちなのに、変な感じ。でも、いいよね。




課長と阿部さんは、歓迎会の翌営業日から課長が彼女の指導係を外れたことで、それまでの近い距離感ではなくなった。

最初、阿部さんはわかりやすいくらいに不服そうにしていたけれど、片岡くんのフォローもあってか、次第にあきらめたようだった。


だけど、課長というモチベーションを失った阿部さんは、以前事務課にいた時と同じくらい、もしかしたらそれ以上に、仕事に対してやる気を失ってしまったようだった。

このままでは彼女がまた会社に来なくなってしまう可能性が高い、ということで、先月、部長が阿部さんを事務課に戻した。
阿部さん自身も、『このまま営業課にいるよりは、事務課に戻った方がまだいい』とここ最近よくこぼしていたのもあり、本部の人たちもなにも言わなかったらしい。



そして……阿部さんの面倒を見られる社員がほかにいなかったからというのもあるけど、私がまた、彼女の指導係となった。

私自身は本当に心配だったし、阿部さんも嫌だったと思う。

でも、部長も、ほかの社員さんたちも、そして――課長も。『戸田さんなら今度は大丈夫』って言ってくれたから。


それに、ここしばらく、課長が阿部さんに指導する姿もよく見ていたから。
課長は私のために阿部さんによく笑いかけてくれていたけど、厳しくするところは厳しく教えていた。そんな”指導者の姿”は、とても勉強になった。
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