冷酷上司の甘いささやき
そう言って電話を切ると、

「電話終わった?」

と、課長がうしろから私に抱きついてきて、猫みたいないつもの仕草で私に顔をすりつけてきた。


今日は事務課も営業課も仕事が早く終わったので、いっしょに課長の家まで帰り、夕飯を作り、ちょうどいっしょに食べ終わったところだった。


「お、終わりましたっ」

課長と付き合い始めてからもう三ヶ月経つのに、相変わらずこのネコみたいな仕草をされるときゅんとしてしまう。
だって、会社ではあんなにクールで、一部の女性社員からは恐れられているくらいなのに、こんな姿はギャップがありすぎなんだもん。


「同窓会行くの? なんの同窓会? 中学? 高校?」

課長は抱きついたまま私にそう尋ねる。


「大学のサークルです。なので、中学や高校と比べるとそこまで懐かしい同窓会ではないんですけど。でも、卒業ぶりに会う人もたくさんいるので、やっぱり楽しみです」

「だな」

頷いて、課長は私から離れた。でも、私とは目を合わさない。


「課長?」

「もしかしてさぁ」

「はい?」

「由依の元カレも来るの? その同窓会」

「え」

突然そんなことを聞かれ、私は驚く。


「昔の話とかあんまり聞かないようにしてたけど、たしか前に、大学のサークルに元カレがいたって話してたことなかったっけ?」


た、確かに話しました……。でも、だいぶ前に話の流れでぼそっと話しただけだったのに、課長、よく覚えてましたねそんなこと……。
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