Love game
何か夢を見ていた気がするけど、どんな夢だったか分からない。
もしかしたら爆睡だったかもしれない。
そんな曖昧な意識の中。
遠慮がちにドアを開ける音がして、俺はゆっくりと現実の世界に戻された。
まだ開かない目を擦り、体を起こす。
…どうやら誰かが入ってきたようだ。
「あれ? 先生いないのかな」
少し幼い感じの女の声。
「さゆ、いいよ。こんくらい自分で出来るし」
それに続く、落ち着いた声。
“さゆ”って、どっかで聞いた名前だな。
中途半端に閉められたカーテンのせいで、2人の姿は分からなかった。
「だって血ィ出てんじゃんっ」
「かすり傷なんだからさ…」
「駄目!! 歩が傷作るなんて許さないからね!」
──歩…?
って、あの?
「さゆ、先戻ってていーよ。あたし次授業出ないから」
「え〜…分かった。じゃあ先生に言っとく」
「うん、ありがと。ごめんね」
「いーよ。ちゃんと消毒してね!」
そんなやりとりを交わすと、友達と思われる女は出ていった。