Love game
へらへらした態度にムカついたのか、男2人は怒りを込めた眼差しを俺に向ける。
“アイツ”なら、俺が引き付けている間に隙を見て逃げるだろうと思った。
でも予想とは裏腹に──俯いたままその場に立ち尽くしていた。
「歩!!」
大声で呼ばれた名前にはっとしたように顔を上げ、走りだそうとする歩。
「てめっ逃げんな!!」
1人の男は歩の腕を掴んだ。
「バカッ…」
俺はそいつに飛び蹴りを食らわすと、歩の手を引いてダッシュを決め込んだ。
「くそ…っ待ちやがれ!!」
しつこく追ってくる男達をまくために、細い路地裏に身を潜めた。
しばらく静止していると、ドタドタと騒がしい足音が通り過ぎていった。
「…行ったか」
こっそり陰から覗き込んで確認する。
俺は自分の胸に、歩の頭を抱き寄せていることに気が付いた。
「うぉっ!! わりぃ!」
「………」
焦る俺とは対照的に、落ち着いたように乱れた髪を手櫛で整える歩。
「てか今更だけど大丈夫か?」
「…うん」