Love game
過去
「あたしの父親、マジで最低な奴だった」
──歩の話はこの言葉から始まった。
両親は世間で言う出来婚だった。
歩は望まれずして産まれてきた子供らしい。
ただ、“望まなかった”のは父親で。
相手のことが本当に好きだった一途な母親に対し、父親は浮気性で自由奔放。
家に戻ってくることも稀だった。
毎日毎日遊び回って、ようやく帰ってきたかと思えば…
「“新しい女出来た”って言ってそのまま消えた。…ふざけんな!!」
歩は顔を歪め、感情を抑えきれずに叫んだ。
悲しみよりも怒りの方が勝(まさ)っているように見えた。
「あいつのせいで全部おかしくなったんだよ!!」
歩は拳をきつく握り締めた。
俺はただ黙って聞いていることしか出来なかった。
全ては言わなかったけど、きっと相当な苦労をしたに違いない。
しばらくして歩は、自分を落ち着けるように深く息を吐いた。
「男なんてみんな同じだと思った。──でも、雅人は違った」
突然出てきた名前と、歩の切なそうな表情に、俺は激しく動揺した。