私の彼、後ろの彼。
私は記憶力が良い方だったが、そこからの記憶があまりない。
いつしか眠ってしまって、目を開けると自分の体が自分のものではない感じがした。
体が重く、起き上がるのがやっとだった。
「天零…」
遠くから声が聞こえた。
「天零、起きなさい」
颯零さんの声だった。
「はい」
このとんでもない状況の中、私はすんなりと颯零さんの言葉を信じた。
ここまで信じることができたのは、あの審議の場で颯零さんが私のことを話してくれたから。
私が本当に思っていたこと、言ったこと、行動したこと、全てを颯零さんは知っていた。
1人で泣いていたことも。
誰にも知られず命を終えたと思っていたのに。
守護霊など、俄には信じがたいものであったが、自らがこうして天国で生き、守護霊になってしまったのだから、守護霊の存在を信じないわけにもいかなかった。
否定してしまえば、自らが存在していることも否定することになるからだ。
私は颯零さんに言われるがままある部屋には入った。
小さな教室のようなところだったが、見渡す限り辺りは真っ白だった。
白い壁に白い床、それに天井も白。電気は見当たらなかったが、部屋の中は明るかった。
部屋の真ん中には机が1つ、椅子が2つあった。
中学の時に勉強していた机よりも広くて大きかった。
「座りなさい」
私は颯零さんの言葉に従った。