私の彼、後ろの彼。


私は記憶力が良い方だったが、そこからの記憶があまりない。

いつしか眠ってしまって、目を開けると自分の体が自分のものではない感じがした。

体が重く、起き上がるのがやっとだった。

「天零…」

遠くから声が聞こえた。

「天零、起きなさい」

颯零さんの声だった。

「はい」

このとんでもない状況の中、私はすんなりと颯零さんの言葉を信じた。

ここまで信じることができたのは、あの審議の場で颯零さんが私のことを話してくれたから。

私が本当に思っていたこと、言ったこと、行動したこと、全てを颯零さんは知っていた。

1人で泣いていたことも。

誰にも知られず命を終えたと思っていたのに。

守護霊など、俄には信じがたいものであったが、自らがこうして天国で生き、守護霊になってしまったのだから、守護霊の存在を信じないわけにもいかなかった。

否定してしまえば、自らが存在していることも否定することになるからだ。

私は颯零さんに言われるがままある部屋には入った。

小さな教室のようなところだったが、見渡す限り辺りは真っ白だった。

白い壁に白い床、それに天井も白。電気は見当たらなかったが、部屋の中は明るかった。

部屋の真ん中には机が1つ、椅子が2つあった。

中学の時に勉強していた机よりも広くて大きかった。

「座りなさい」

私は颯零さんの言葉に従った。

< 16 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop