私の彼、後ろの彼。
不思議なことに、お腹は減らなかった。
眠たくもなかった。
疲れることもなかった。
私は何時間勉強しても集中が途切れることはなかった。
「それじゃあ、復習するわね」
颯零さんも疲れた様子を見せず熱心に教えてくれた。
私は守護霊になったときのことを学んだ。
我々守護霊は一人の人間を担当する。
その人間が産声をあげて生まれた時に天から人間界へと降りて行く。
我々霊界の保管庫には人間一人ひとりの人生計画が書かれたファイルがあり、そのファイルを持って行く。
ファイルの中には何月何日、何時何分に生まれ、何月何日、何時何分に亡くなるということも書かれていた。
更には何歳の時にどんな怪我をするか、小学校では何組になるか、中学校ではどんな部活に入るかということまで書かれていた。
担当する人間の全てを我々は知っていた。
私と璃子のように話ができる者たちもいたが、ファイルの内容を話すことは禁じられていた。
そして、人間の寿命を延ばすことも禁じられていた。
人間の寿命は一人ひとり決められていた。
ファイルに記録されている以上の時間生き長らえることは、次に生まれてくる人間の命に影響を与える。
そのため、寿命を延ばすことは絶対にやってはならないことだった。
霊界では、人間界を見張る霊がいた。
その見張りの霊が、守護霊の掟を破った者を見つけ審議をし、厳しい罰則を与えた。
記憶は消され、地獄へと突き落とされる。
地獄には恐ろしい鬼がいると颯零さんから聞いた。
だが、誰も鬼を見たことはないと言う。
なぜなら、地獄から戻った者は誰一人としていないからだ。
人間の一生はファイルに記載してあると言ったが、1つだけ何も書いていないことがあった。
それは、夢。
人間が寝るときに必ず見ているといわれる夢。
その夢も我々守護霊が作っていた。
そして唯一、夢だけは人間に話しても良いこととなっていた。
こんな夢を見たい、あんな夢を見たい、と人間が口にすると願っていた夢が見れることがあるというのは、我々守護霊が人間の言葉を聞いてその通りの夢を作っているからなのだ。
それからもう1つ、寿命に来る前の危険を回避することは行っても良いとされている。
交通事故死や溺死、不慮の事故、自殺などは寿命でない限り、回避しなければならない。
人間がファイルに書かれていること以外で死亡することは我々守護霊にとっては重大なミスになる。
更には、殺人や犯罪を人間が犯すことも重大なミスである。
守護霊の中には邪悪な思想を持つ者もいた。
審議で大抵の思想はオーラとなって審判霊総監が見抜いてしまう。
だが、中にはオーラでも見えない思想があった。
人間として生きている間も言葉にせず、ただ心の中で思うだけであれば守護霊は人間の思想を知ることはできない。
ファイルにも思想については記載されていない。
重大なミスをすれば守護霊の持ち点が減る。
元々守護霊には10点の持ち点があり、点数が0になった段階で守護霊の役割を取り消される。
又、守護霊には階級があり、階級を決めるのに必要なのが点数と実績なのだ。
颯零さんの指導霊であった審判霊総監は、55人の人間を担当し、点数も10点のままだったらしい。
颯零さんは恒颯さんのようになりたいと思ってきたらしい。
私も颯零さんのように、素晴らしい守護霊になろう。
こうして私は3年間、守護霊としての教育を終えて、守護霊になった。