私の彼、後ろの彼。


手元に届いたプリントには「君のこと教えて」と書かれていた。

「今からそのプリントに書かれている項目に答えてください。みんなの個人名簿を作らなきゃならないから」

生徒はみんなキョロキョロしながら周りを伺っていた。

プリントには、好きな食べ物、趣味、性格、好きな友達、好きな芸能人、好きな色、得意なこと、座右の銘などなど、沢山の項目があった。

「これは試験でも何でもない。だから自由に書いてくれ。それじゃあ、スタート」

宮下先生の合図で始まった。

これといって今まで好きなものを書き上げることなどなかったから、こうして改めて何が好きかと聞かれると案外出てこなかった。

1つ目から私はペンが止まった。

気になって、少しだけ後ろを振り向いた。

すると、真剣にプリントと向き合う新田真がいた。

試験でも、授業のプリントでもないのに、1つ1つに真剣に答えていた。

「ん、何?」

急に彼は顔を上げた。

私に見られていたことを知っていたかのようだった。

「あ、いや。何でもないです」

私は慌てて前を向いた。

「璃子」

前を向くと、すぐに後ろから声が聞こえた。

その小さなささやきが、てんちゃんのものか、それとも新田真のものか瞬時には分からなかった。

後ろを振り向くと、新田真がこちらを見ていた。

そして、彼の隣にはてんちゃんがいて、彼のプリントを覗き込んでいた。

そんなこととは露知らず、彼は私に言った。

「璃子、好きなものとか好きなことって頭にパッと思い浮かんだ物でいいんだよ。そんなに真剣に悩んでたら何時間もかかるただろ。今、目に見える色の中で好きな色はなに?」

「白」

「ほら、それでいいんだよ」

彼はニコッと笑うとまた自分のプリントへと向きを変えた。

「璃子、新田君いい奴じゃないか」

てんちゃんが私の机の前に来て言った。

私は小さくうなづいた。

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