私の彼、後ろの彼。


「おい、お前ら遅れるぞ」

 自転車で2人の横を駆け抜けて行く生徒がいた。

「あ、健人(ケント)だ」

 健人は中学3年生のときに私と美香が通う東陽中学校に転校してきた。

 健人は明るく社交的で、転校初日からみんなの人気者になった。

 私は内気で友達が多い方ではなかったが、美香は底抜けに明るかった。

 そのせいもあって美香は健人とすぐに意気投合した。

 美香が健人と仲良くなるということは必然的3人で話をすることも多くなり、生まれて始めて私は男友達と呼べる人ができた。

 それからは3人で買い物をしたりカラオケに行ったりと、中学生活は楽しい思い出ができた。

 私の思い出が良いものになったのは、全て美香と健人が仲良くなったからだった。

「こらー、健人!待ちなさいよー!」

 美香は自転車で走り去っていく健人の後を追いかけようとしたが、追い付けないと分かったのか、初めから追い付く気などなかったのか、2・3m走っただけで止まってしまった。

「まったく、健人はいつもああなんだから。嫌になっちゃうよね」

 そう言って美香は呆れた顔をした。

 だが、私は知っていた。

 美香が健人のことを好きだということを。

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