私の彼、後ろの彼。


 美香と他愛もない話をしながら歩いていると、いつの間にか学校に着いていた。

 玄関には大勢の生徒が並び、張り出されているクラス表を眺めていた。

 友達と一緒になった者は喜び、友達と離ればなれになった者は大粒の涙を流していた。

 その光景はまるで合格発表の時のようだと思い、私は何だが拍子抜けをしてしまった。

 あんなにドキドキし、神経をすり減らしてまで今日の日を迎えようとしていた自分がバカらしきくなった。

「ねえ、私たちもクラス一緒になるかな」

「どうだろう、分かんないや」

 美香は自分のクラスが気になって仕方がない様子だった。

 朝見た小学生のように、はやくはやく、と私の右手を掴んで引っ張っていた。

「おーい!こっちこっちー」

 美香に急かされて、私も自分のクラスが気になり始めた頃だった。

 玄関とはちょっと離れた場所に健人が手を振りながら立っていた。

「なんなの、もう」

 美香は仕方なく、でも何だが嬉しそうに歩く方向を変えた。

 美香に腕を引っ張られている私は、何の抵抗もできずに美香の後を追うしかなかった。

「私たち、これからクラス表を見に行くところだったんだけど」

 美香は未だに私の腕を掴んだまま健人に言った。

「まあまあ、落ち着けって」

「落ち着いていられないわ!私たちにとっては同じクラスになれるのかが重要なの」

 美香は少し興奮していたようだった。

 私の腕を離せないことからすると、きっと美香も緊張しているに違いない。

 私は、少し安心した。

 あんなに強くて何でも1人でこなせそうな美香でさえも、新しい環境になるというのは、怖いことなのだと分かったから。

< 5 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop