私の彼、後ろの彼。
しかし、私の安心した気持ちも長くは続かなかった。
「俺と美香は同じ2組だけど、璃子は4組なんだよ」
「え…」
「嘘でしょ、健人。璃子だけクラスが違うなんて」
私はしばらくの間、開いた口を閉ざすことができずにいた。
美香も不安なんだと安心した矢先のことだっただけに、相反して私の不安な気持ちは朝よりも倍増してしまった。
いつまで経っても閉じることのない私の口を美香がそっと塞いでくれた。
「美香、とりあえず教室に行こう」
もう決まってしまったクラスなのだから今更泣きわめいても変えてくれるというわけではない。
だったら目の前の現実を受け入れるしかない。
子どもの頃からのそうやって現実と向き合い、現実を受け入れて生きてきた。
目の前の現実を受け入れれば、自分が思っていた以上に心地よい場合もあるのということを私は知っていた。
教室の前まで3人で一緒に歩いていた。
だが、それも最初だけで、いつしか美香と健人は先に歩き、私は2人の後をついて歩くようになった。
2人は私が遅れていることにも気付かずに2組の教室へと入っていった。
「あ、璃子ごめん!いつの間にか先に来ちゃった」
思い出したように教室から顔を出して美香は私を見た。
「ううん。大丈夫…」
そう私が言い終える前に美香は教室へと姿を消した。
美香は少しサバサバしたところがあった。
自分の興味があることや好きなことには猪突猛進だった。
きっと、健人と同じクラスになれたことが嬉しかったのだろう。
「ふー、行くよ」
私は小さく呟くと、4組の教室へと入った。