Live as if you will die tomorrow
ーあれ。
夜、カウンター越しに見える、崇の隣の席に腰掛ける女に、見覚えがあって、片手間に考える。
何やら親密な雰囲気だが。
ーどこかで見たな…
答えが出ないまま、唐突に裏口から入ってきた空生と目が合った。
「マティーニ」
「お、零じゃん」
開口一番、無表情で言い放った空生に、崇が気付き、続いて女が狼狽えたような気がした。
でもそれはほんの一瞬でー
「あっ、零。やっと来た!」
コロリと表情を変えて、端に座った空生の隣に寄ってくる。
ーあ、そっか。
そこで漸く合点がいった。
今空生がとりあえず利用している女の一人だ。
名前は忘れたが、多分、葉月が今日見たって大騒ぎしていたのも、この女のことだろう。
ターゲットですらない。
そして、恐らくー
「ーあんた、誰?」
「えっ?」
空生の冷ややかな一瞥と、言葉に、擦り寄ろうとした女が固まった。
「俺、あんたのこと、知らないんだけど。」
ー崇がまたちょっかいだしたか。
事の成り行きを最後まで見ることなく、俺は肩を竦ませ、倉庫にストックを取りに行った。