Live as if you will die tomorrow
「いってらっしゃいませ。」
結局、雀の囀りが聞こえるまで眠ることが出来ず、欠伸ばかりが出る朝。
「いってきます。」
見送る凛子に、挨拶を返す。
「あ。」
忘れ物に気付き、踵を返すと、凛子が直ぐに反応して。
「私がいってきます。」
「いや、いいです。」
「いいですじゃないです!ほら、何なんですか?仰って下さい!」
頑として道を譲らないものだから、観念した。
「レポートを机の上に置きっ放しに…」
「今すぐ取ってきますので、少々お待ちください。」
きっちりと纏めたお団子を小さく揺らしながら、凛子は早歩きで階段へと向かって行く。
その様子を眺めていると、視界に別の影が侵入してきた。
「あら、燈真さん。おはよう。」
ーげ。
今一番顔を見たくない相手。
静が、部屋から出てきた所だった。
「ーおはようございます。」
招かれざる客は、朝方、来た時と同じように、静けさと暗闇に紛れて帰って行ったようだった。
ようだった、というのは、今度は直接見たわけではなく、犬の吠え声を聞いたからだ。恐らく静が眠っていたから、犬の前に顔を出さず、警戒したのだろうと思う。