Live as if you will die tomorrow


数日後。


開店数時間前のルナに、崇が冴えない顔でやってきた。


吸えない煙草を吹かしている。


昔から何か考え事があると、紛らわす為に敢えて苦手な煙草を咥えてみる。本人に自覚があるのかないのか、それが崇の癖だった。後は格好付けたい時にも同じ事をする。典型的な阿呆だ。

煙草が吸えないと気付かれてる事にも、崇は気付いていないようだけど。



「……ん」



いつもとは違い、酒の催促もなく、座ることもない。

ただ、USBを差し出し、俺が受け取るのを待っている。



「何。」


訊けば崇は「頼まれてたヤツ」と短く答えた。



「なんでUSB?」


「データが膨大だったから。」



俺がUSBを受け取ると、崇はじゃあねと身を翻す。


「珍し。報酬は要らないの?」


不思議に思い訊くと。



「そんな気分じゃねぇ。」



振り返る事なくヒラヒラと手を振って出て行ってしまった。
< 120 / 314 >

この作品をシェア

pagetop