Live as if you will die tomorrow
崇は情報屋だ。
自分の元の名字を『知らない』訳がない。
使いたくないにしても、どんな名字だって良い筈だし、今迄だって適当に使って誤魔化してきた名字がある筈だ。
「は?そんなの、葉月が嫌がるに決まってんだろ。」
普段通りに戻りつつある空気に、若干の緩さが入り込む。
崇は、そうなんだけどーともじもじし出して、気持ち悪い。
「まぁ…俺は別に良いけど。てか、わざわざ断りに来るもんでもないだろ。斉藤なんてどこにでもいんだし。」
軽くあしらうように言って手を払えば。
「やったー!」
崇は飛び上がって、満面の笑みを浮かべた。
「ほら、用が済んだら出てけよ。」
何がそんなに嬉しいんだか、さっぱり分からない俺は、手の振りを大きくして、崇を追い出しにかかった。
「はいはーい、お掃除ちゃんとしてね、とーま!」
崇も崇で、おどけながら、俺の傍を通りすぎていく。