Live as if you will die tomorrow
ミサキ、という女は、大学生で、崇の話によれば、空生に助けられたと思い込んでいるらしい。
そして多分に漏れず、『零』に恋をしている、と。
ミサキ自身はといえば、ほとんど会話をせず、ただ大人しく座って、零のステージを観ていく。
初めて来てから、一週間、殆ど毎日ルナに顔を出し、特に零が大体一晩居座る金曜日は、必ずという程、最後まできっちり観て行った。
俺にしてみれば、それなりに酒も頼んで、金を落として行ってくれる上に、トークを必要とせず、悪さもしない、地味に浸っていく、そういう客は、有難い位だ。
ただの、一時の熱に浮かされた、零のファン。
飽きたら勝手に消えるだろうし、そうじゃなくてもクラブの常連になってくれる。
それなら放っておこうと、何か心に引っかかるものを覚えつつ、気に留めなかった。
でもそんな心情は、ある日を境に、変わっていく。