Live as if you will die tomorrow
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「あのっ…」
照明と暖房と、熱気のせいで、真冬に似つかわしくないほど汗を掻いた空生が、ステージから、カウンターに向かって降りてくるとー空生は途中で人に捕まるのが嫌で、気が向いた時しか、そのままカウンターに来ようとはしないー一番ステージ寄りのスツールに座っていたミサキが、突然立ち上がった。
一瞬だけ、迷惑そうな空生の視線が、ミサキに向けられた気がするが。
「先日はっ、助けていただいて、ありがとうございましたっ!」
「バーボン」
こんな大きな声が出るんだ、と驚いた俺と崇を余所に、空生は完全にミサキを無視して、酒の注文をすると、ステージから一番離れたスツールに腰掛けた。
ミサキは、振り返る余裕もないようで、気をつけの姿勢のまま、固まっている。
首と耳が真っ赤だ。