Live as if you will die tomorrow



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ガチャン

酒瓶の入ったケースが、乱暴に床に置かれて、危うい音を響かせる。


「ちょっと葉月ー」


「ちょっと、何なのよ、あの女は。」


めでたくハタチを迎え、家を出て行く選択肢もなかったらしい葉月には、ルナを手伝う許可をくれてやった。


「んー?まぁ、気にすんなよ。」


ミサキの背中をギラギラした目で睨み付ける妹を見て、失敗だったかなと己の判断を悔やみそうになる。


「ちょっと!!ちゃんと教えてよ!!」


俺の手前邪険に出来ないのか、はたまたどうでもいいからなのか、空生は葉月の我が儘に意外と応えてやっていた。

それが、恐らく葉月自身にも『特別』な感じに受け取られ、空生の近くに寄る女を敵視して良い理由となっている。


ー誰にでも平等に興味が無いからな、空生は。


小さい頃から、高校を出たらそのままルナに、という葉月の迷う事ない進路は、空生の傍に居られるからという邪な気持ちが、大半を占めていると思われた。


本当の名前すら、知らないのに。



「大丈夫だって、葉月。相手にゃされねー人種だからよ。」


一番近くに座っていた崇がそう言えば、ぶつけたいけどぶつけられない怒りの矛先が崇に向けられて。



「うっさいニワトリ!」

憎々しげにそう吐き捨てると、クルリと背を向けて帰っていった。


「っとに、かわいくねぇーな、お前の妹。」


こっちも苦々しげにぼやく30過ぎた男。



ーあそこ迄嫌そうな葉月、珍しいな。


くすくす笑う、ミサキのこれまた珍しい反応を耳にしながら。


ー兄妹だから、やっぱり似てるのか。


感じていた。


耳障りだ、と。


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