Live as if you will die tomorrow
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雪が、降りそうな程に寒く、暗い夜。
裏口から入ってきた空生が、カウンターに来て、初めて来た時にも座った一番端の席に腰掛ける。
「そろそろ、また行くね。」
寒がりの空生は、コートを着込んだまま。ポケットに手を突っ込んだまま。
笑顔で別れを告げる。
「んだよ、折角楽しくなってきたのによぉ。もういっそのことずっとここに居ろよ。」
ー自然に笑えるようになってきたんだな。
崇と空生の会話に静かに耳を澄ましながら、グラスを出してやりつつ、考える。
その笑顔は、誰のなんだろうな、と。
確実に、空生ではない。
俳優が役作りをして、自分に戻るのに時間がかかることがあるのと同じように、空生も、そういうことがある。
それか、現在も進行中なのか。
「清算は済んだの?」
受けている報告内容だとほぼ終わっているはずだが、ふと気になって訊くと。
「…まぁ、いつも通り。大丈夫だよ。」
崇からもらったジンが入るグラスを揺らしつつ、空生は静かに頷く。