Live as if you will die tomorrow


ミサキの兄が、鬼みたいな形相でルナに乗り込んできたのは、空生が去った翌々日の事だった。


零の不在の所為で、若干減った客を掻き分けて、カウンターへとまっしぐらにやってきた。


トシヤが必死の形相で追いかけてきている。

ただならぬ雰囲気を察した他のスタッフも加わり、後もう少しで捕らえられそうな瞬間。



「あいつを出せ!」


肩で息を切らす青年は、流れる音楽に逆らうように怒鳴った。



「レイって男を出せよ!」



朝から降り続いている霧雨のせいで、頭から足までしっとりと濡れている。

カウンターに抑え付けられながらも、必至に目を上げて、強く俺を睨みつけ。




「人殺しの詐欺師を出せよ!!!!」


縮まった喉から、絞り出すような咆哮。



俺はそんな男を冷ややかに見つめて。




ー御愁傷様。


と、心の中で呟いた。


ミサキは、賢い子だったね。

でもね、目障りだったんだよね。


俺の記憶にねじ込んでくるから。




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