Live as if you will die tomorrow

空生の養父は、施設の職員で、というか、空生が保護された当時、施設長を勤めていた人間だった。

退職後も、嘱託職員として施設に関わっていたようだ。

名前のなかった空生に、空生という名前をつけたのも、この男だった。

結局空生は、養父と共に暮らす事を拒み続け、用意された家に帰る事は一度もなかった。


「あいつの親父、事故で逝ったらしい。」

「え…」


騒がしい葉月が、二階のスタッフルームに上がっている合間に、崇に教えると、崇は分かりやすく頬を引き攣らせる。


「大丈夫かな…」



崇は空生の事となると、途端に心配性になる。

自分自身を棚に上げて。


「大丈夫だろ。」


そんな崇に掛けてやる言葉は他にない。


ーここが在るから。

これは心の中でだけ呟く。


帰って来る場所が、ここに在る。


だから、空生は大丈夫だ。

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