Live as if you will die tomorrow
零のイベントで、零目当てじゃなく、新しい客が入ってくるのは、中々レアだ。
勿論、なくもないのだが、零を知らない初めての人間が、零のファンでぎゅうぎゅうのルナに入るというのは、難しいものがあるのだ。
だから余程の間抜けか、図太い神経の持ち主でなければ、「ここじゃなくてもいっか」という展開になる。
つまり、目立つのだ。
ー見ない顔だな。
多分に漏れず、22時を超えてやってきた客は、ルナに入るなり、きょろきょろと周囲を見回し、自分初心者です、の空気をだだ漏れさせていた。
服装は派手過ぎることはないが、男受けするタイプで、おまけにどっかで一杯引っ掛けてきたのか、目がやや据わっている気がする。
そして虚ろなその目がカウンターに留まると、足早に近づいてきた。
が、何も言わずに、ど真ん中のスツールに腰掛けると満足したようにふぅ、と一息吐く。
「何を飲まれます?」