Live as if you will die tomorrow
崇も聞いてないフリして実はちゃんと聴いている。
だから、このルナで、零の演奏を聴いていない人間はただ一人。
入ってきてから今までずっとノンストップで、崇に勧められるまま酒を呑んでいるカノンー崇が「カノンちゃんに一杯あげて」と言うから嫌でも知ったーだとか言う女だけだ。
「崇。もうやめとけよ」
そろそろ曲も終盤になってきたのを悟った俺は、こっちーカウンターーの方も終わらせようと、声を掛けた。
歓談を止めて崇は楽しそうに俺を見上げる。
「なんでだよ。まだ大丈夫だって。な?カノンちゃん?」
顔真っ赤。唇も腫れぼったく、目は虚ろどころではない。
おやすみなさいに限りなく近い状態。
なのに。
「あい。まだいけますれす」
何故、まだ口を利く。
ふらふらしながら、敬礼に見えなくもない無意味な動作もしている。
俺ははぁーと長めの溜息を吐き、怒りを逃がしてから。
「潰す気か?」
そう言うと、今度は崇がへそを曲げた。
「どっちでもいーじゃん。この子と俺の勝手じゃん?」
へらへらした笑顔はいつも通りだが、どう考えても狙っている。