Live as if you will die tomorrow
「カノンちゃん?」
がっかりだ。
名前を呼ばれて上げた、女の顔には、そう書いてあった。
目が潤んでいるのは酒のせいだけではなさそうで、崇が珍しく嫌われたのかと不思議に思った。
ただ強引に行こうとしているらしい崇が立ち上がると、女は寂しそうに目で追う。
諦めた、そうも読める表情。
「行こう」
崇は、イケると判断したのだろう。やや強引に、カノンの手を引いた。
そして確かに女は頷いたー
「だめ」
筈だった。
「…なんのつもりだよ…」
崇が驚いた声を出すのも無理はない。
俺だって驚きで、この状況が掴めない。
「俺コイツに用があるんだよ」
崇から女を自分に引き寄せ、奪ったのは、今の今まで演奏をしていて、ルナの客を魅了していた、空生だったからだ。
「まさかそれ今回のターゲット?」
俺はかろうじて妥当そうな可能性を指摘したが、空生はケラリと笑う。
「まさか。こんなのターゲットにしたら元が取れないよ」
だけどーと続ける。
「当たらずとも遠からずってトコかな。ターゲットじゃないけど仕事に必要な役者だ。」
言いながら、女をさらに引っ張って立ち上がらせ、ふらついた所で腰に手を回して自分に寄っ掛からせた。