Live as if you will die tomorrow
「わかった。じゃ、一回だけ読んであげる。そしたら部屋に戻るんだよ。皆が心配するといけないからね。」
約束を含めて、言い聞かせると、葉月は素直に頷いた。
「そこのソファの上で読もうか。」
絵本を受け取って、自分の座っていた回転椅子から立ち上がると、葉月はさっさとソファに向かって歩き出し、アームの部分に、頭を載せた。
すぐ隣に腰を下ろし、ぺら、と紙を捲ると、主人公だろう男の子がもう既に屋根に上っている絵が描かれている。
「『眠れない夜。男の子はこっそりと部屋を出ます。』」
絵本の内容は、寝付けない主人公が気分転換にベットから抜け出す所から始まっている。
「『夜の外には誰もいません。やがて空に向かって、立ち上がり、こう言いました。』」
『誰か僕を夢に連れて行って』
要するに寝かせて欲しいということなのだろうが、回りくどく感じるこの要求は、月の耳に偶然届く。