Live as if you will die tomorrow
「お帰りなさいませ、燈真様。」
初等部から帰宅すると、決まって広間から賑やかな声が聞こえた。
おまけに玄関には、複数のキツい香水や化粧品の匂いが、入り混じって漂っている。
「ただいま、凛子さん。静さんはまたお茶会を開いているの?」
「ええ。」
俺から鞄を受け取りながら、家政婦の凛子は笑顔で答えた。
「燈真様もお疲れになったでしょう。何か飲まれますか?」
俺が歩くスピードを緩め、思案している間に、奥から凛子を呼ぶ声がする。
「僕は大丈夫だから。静さんの所にいってあげて。」
そう言って微笑めば、凛子は至極申し訳なさそうな顔をして。
「申し訳ございません。奥様のご用件が終わり次第、直ぐにお部屋にお持ち致しますので。」
頭を下げると、俺の鞄や上着を手にしたまま、飛ぶようにして広間へと向かった。
ー茶会が終わるまで、あと2時間は、戻って来れないだろうな。
後ろ姿を目で追いながら、予想を立てて、階段を上る。
家政婦は凛子だけではなかったが、凛子は静のお気に入りで、しょっちゅう呼び出されては、こき使われているのだ。