Live as if you will die tomorrow
「いいよ、凛子さん。重いから、僕が運びます。凛子さんは、部屋の扉を開けてもらってもいいですか。」



「いえいえいえ、そんなそんな…!」


凛子は遠慮していた様子だったが、俺がどんどん歩いていくので、強制的に扉を開ける役目になった。



「葉月様!」


部屋の中では、乳母がやはり捜していたらしく、俺の腕の中で眠る葉月を見て安堵の表情になる。


成る程、聞いていた通り、喉が枯れている。




「あ、忘れた…」



葉月を、ベットまで運んだ直後、うっかりしていた、と呟いた。



「どうかされたんですか?」



俺の様子に気づいた乳母が訊ねる。



「葉月のお気に入りの絵本を、僕の部屋に忘れて来てしまったので…」



「ああ、お月さまのですか?」



頷くと、困ったように彼女は頬に手をやる。




「葉月様は、本当にあの絵本が好きで好きで…今から取りに伺いますね。」






「なんであれが好きなんですかね。特に楽しい話でもなかったですけど。」






ふと疑問を呈せば、部屋を出かけた乳母の顔が曇る。







「ここだけの話ですけど…静様が買ってくださった本だから、かもしれません。」
< 21 / 314 >

この作品をシェア

pagetop