Live as if you will die tomorrow
その日の夜。
「崇さ、いい加減その馬鹿そうなキャラやめたら?」
相も変わらずカウンターに突っ伏す姿に、いい加減嫌気が差してきて、腹立ち紛れに空のグラスを音を立てて置いた。
だが、崇はピクリともしない。
こうも負のオーラを背負い込んでる人間が一人でも店内に居ると、客商売の観点からしても、非常に迷惑だ。
「まさか、本気であんな女が好きなわけじゃないでしょ。」
何度かこうして同じ質問をしているが、崇は返事をしない。
「崇の好きな女って、カノンって言うんだ。」
奥の客のグラスを下げてきた葉月が、わざとらしく呟いてみせる。
最初の内は崇を激しく馬鹿にしていたのだが、日曜の一件があってから、話が結びついていることに気付いたらしい。
崇の言っているカノンが、零が追い掛けたカノンであることに。
「…やめろ、葉月が呼ぶと、カノンちゃんの名前が腐る。」
俺の声には無反応の癖に、葉月にはちゃんと反応する辺り、複雑な心境だ。